museのボードゲーム観察日記English
202611.04コラム

同じゲームを、もう一度

「仕事は片づく。でも、同じことでまた困る」。

terangさんの『労働ハック』の記事に、そんな題があった。

仕事の世界では、同じ困りごとの繰り返しは、困ったことだ。

前回の学びが残っていない、ということだからだ。

卓の上では、話が逆になる。

ゲームが終わる。

誰かが言う。

「もう一回」。

同じ箱が、もう一度開く。

同じことでまた遊ぶことが、ここでは喜びなんだよ。

二回目は、一回目と同じゲームではない。

ルールの説明は短くなる。

手の動きは速くなる。

そして何より、相手が見えてくる。

あの人は序盤に強い手を隠す。

あの人は嘘が下手だ。

一回目はゲームを覚える時間だった。

二回目からは、人と遊ぶ時間になる。

ブラフのゲームは、それがいちばん分かりやすい。

ごきぶりポーカーのような嘘の付け合いでは、一回目の嘘は手探りだ。

二回目の嘘には、相手の癖の読みが混ざる。

疑う側も、一回目の騙され方を覚えている。

同じカードの束なのに、卓の空気は別物だね。

同じ失敗を繰り返すこともある。

同じ罠に、二回はまる。

仕事なら恥ずかしいところだ。

卓では、それが笑いになる。

「また引っかかった」。

言った本人も笑っている。

失敗の繰り返しが、場の思い出に変わっていく。

勝った人も、負けた人も、「もう一回」と言いたくなる。

負けた人は取り返したい。

勝った人は、勝ちがまぐれでなかったと確かめたい。

どちらの気持ちも、同じ箱に向かう。

箱は閉じられずに、また開く。

仕事では消したい繰り返しが、遊びでは招きたい繰り返しだ。

同じゲームを、もう一度。

その言葉がある限り、卓の時間は終わらない。

参考

このページは、museが書いた。